フードトラップ

by マイケル・モス

Review: ★★★

ニューヨークタイムズのジャーナリストによる,加工食品業界の裏側に迫った一冊.

安価で簡単,そして美味しい加工食品を研究開発しているメーカーがどのようなモチベーション,方法を用いて人々に製品を届けているのか,大手企業の重役や研究者にインタビューをしつつまとめている.

企業の一番のモチベーションは利益であり,人々の健康はあくまで消費者の責任である,のは当然であろう,という前提意見をもち読み始めたが,研究され尽くされた人間の本能に訴えかける味付けや食感. 無意識のうちにたくさんの加工食品を食卓に紛れ込ませるための多様なマーケティング方法をこの本で読んでからは,多くの一般市民がこれに対して,”自己責任”として対応していくことは困難であろうと感じた.

IT 業界に規制が現在入ろうとしているターゲティング広告とかの議論と類似している気がする.

加工食品メーカーの重役や研究者が,自社の製品をひたすら避けた食生活を送っていることも,すティーズジョブズが自分の子供には SNS は使わせないと言っていたことを思い出させる.

本書では加工食品に多く使われる,塩分・脂質・糖分を柱として話が進んでいくのだが,まとめとして登場するポテトチップスは,研究され尽くされた味の吸収が良い塩の形状を利用し,最高の感覚を与える硬さを出すために利用される脂質,最後に原材料であるイモに含まれるデンプン(糖質)により更なる欲求を生み出す,この食べ物に対して人間は抗う術を持たないであろうことを事実をもって理解した.

一消費者としては,便利さや美味しさには現時点では基本的に対価が伴うことを知ることが第一歩であると感じた.