進化とは何か

by リチャード・ドーキンス

Review: ★★★

「利己的な遺伝子」の著者として知られる,イギリスの進化生物学者,リチャード・ドーキンスが行った日本での数回の講演をもとにして書かれた一冊.

一般人向けに,わかりやすい例を多用しつつ進化,生物の本質に関して丁寧に説明されている.生物の素晴らしい性質をたくさん紹介しているため楽しく読める.それでいて進化に関しては明確に著者の分析が与えられている.

ドーキンスは無神論推進者としても知られており,その思想がふんだんに本著の中で垣間見ることができる.そもそも宗教が社会において全面に出てこない日本社会の住人としては想像がつきにくいがかなりはっきりとした態度で,宗教の非論理性を述べており,その論調も読んでいて面白い.

本著で印象的だったのは以下の一文

DNA は世代を下って流れる川のようなもの.DNA の川は私たちを通って,同じ姿のまま未来に向かって流れていく.

生物はあくまで DNA を伝搬するための乗り物であり,その本質は種の生存のために変化を続ける DNA であるととれる.今のコロナ禍ではっきりと,ウイルスの変異種の出現が続き,感染力を高めたりワクチンへの抗体を身につけたりしている状態を見ることでそれがはっきりと確認できる.

進化とは直接関係がないが,人間が地球を統治している時間が,地球,さらには宇宙の時間スケールで考えるといかにちっぽけなものかも説明している章がある.毎日の仕事に追われると,自分その狭い周辺が世界の全てであるよに錯覚すべきだが,あくまで自分という個体はホモサピエンスという種の DNA の 1 媒介者であることを忘れたくはない.