背景

海外の博士課程に応募するにあたって色々書類を書く必要がある.所属していた研究室にも近くの友人にも博士課程を日本以外で取ろうとした知り合いがいなかっため,書き方(何を書けばいいのかすら)わからない書類が多い. その中でも特によくわからんかったものに “Research Statement” (以下 RS)がある.文書の名前からはいイマイチ何を書いていいのか自分は推測ができなかった.

日本語で検索してみてもほとんど資料が見つからない.そもそも日本語では他の名前がついているのだろうがそれもなんなのかわからず,結局英語で調べた.

英語であればわかりやすい資料が安心する団体から公開されており参考になった.

自分も今後再度書くことがあるかもしれないし,同じような人が日本語で調べた時に寂しい気持ちにならないように,調べて知った情報と,自分が実際にどんなことを書いたのかここにまとめておく.

(この記事を書いている現時点で,自分が書いている RS を搭載した application が受理されたかどうかの結果は出ていないので信憑性は怪しい.結果が出た際には追記する.→ この記事を書いている時に受理されたとの結果がきた.)

参考になる資料

一番参考になった資料はこれ. 計算機科学で高名なカーネギーメロン大学から公開されている資料. (ちなみに同大学にいる日本人の計算機科学研究者である金出先生の講演動画がモチベーションをぶち上げてくれるのでおすすめ.)

「RS の目的」と「書くべきこと」がまとめられている. PDF 2枚だけなのでオリジナルを読んだ方がいいが,要点を簡単に日本語にすると以下のような感じ.

  • 1 ~ 3 ページで構成される
  • アカデミックなキャリアに応募する時に求められる
  • 以下を示す
    • 一人で研究を構成すること
    • 記述力
    • 短期・長期的な研究目標

全体の構成案も具体的に,Sequence,Novelty,Problem の三つが提案されてる.今回自分はこの中で一番個人的に書きやすそうだった Sequence を採用した.

書いたものの概要

今回自分が書いた Research Statement ではこれまでにやってきた研究を時系列で並べてその変遷を説明し,その延長としてこれからやっていきたい研究を簡単にまとめた. その概要が↓.

  • イントロ
    • oo と xx な理由で,自然言語処理モデルを外部の知識ベースで拡張する研究に興味があるよ.
    • qq な理由でこの研究は重要であるよ.
    • このステートメントには自分の研究変遷と今後やりたいことを書いたよ.
  • 過去・現在のプロジェクト
    • 各プロジェクトの目的と概要を列挙
      • (それぞれに関連があるように,できるだけ一貫性があるように書いた.)
    • これらのプロジェクトを進めるうちに oo な問題を発見して,これを解決するために今後の研究を考えているよ.
  • 今後やりたいプロジェクト
    • 問題提起をちょっと詳細に
    • 問題をより理解するための Research Questions (RQs)
      • RQ 1
        • RQ の説明と,考えられる回答のためのアプローチ.
      • RQ 2
        • RQ 1 と同じ
      • RQ 3
        • RQ 1 と同じ
  • 参考文献

自分がやってきたことの説明を通して自分の能力を,今後やりたい研究を提案して論理的に立案ができることを,示そうとしてみた.

書くにあたって大変だったこと

自分がやりたい研究とは?

博士に進むからには興味がある研究分野である.なのでやりたいことがたくさんある. すると,限られた時間で一貫性のある Reseach Statement を書こうとすると全部部を含めることはできないので,一つを選び書き上げることになる.

一つのトピックを選んだとしても,それに関連する引用したい手法は幅広くあるし,気になる RQ もたくさんある. 相手に伝わる文書を書くには話に筋が通っていることが重要であるので,できるだけ脱線させずに安定した論調で読者に伝わるように書くのが非常に難しかった.

構成がむずい

研究成果である論文を書こうと思ったら,コンピューターサイエンスの場合たくさんの素晴らしいかこの論文に無料でアクセスすることができるので,構成の参考には困らない. が,Research Statement は求職時や研究費の確保のために書かれるものなので,検索してもなかなか自分の目的に合致したものが見つからないため,参考にできるものが少なかった. 上で言及した CMU の資料が見つかったことでだいぶ助けにはなったが,実際自分が書いたものが Research Statement としての体裁を満たしているのかは未だ完全な自信はない.

見直しがむずい

これが一番大変だった. Research Statement に限らず,相手に正確に情報を伝達することを目的とした文書では,一度書いたものを何度も見直して改善を繰り返すことが重要である. 当然,今回も見直しをしたが,自分が書いた文書なので批判的かつ客観的にそれを読み返すのが非常に難しい. PC で書いた後に,普段他人の論文を読むときのように iPad に転送して読んでみたりすることで,客観的な環境を用意して挑んでみたりしたが,あまり効果がなかった.

今回は幸いなことに,他分野ではあるが研究職で文献を読むことに慣れている彼女と,同じ研究分野にとても詳しい先輩に丁寧なチェックをしてもらえた. やはり,他の人が見ると自分では全く問題だと思っていなかった箇所を指摘してくれるので非常に良い. 今回も,もらったコメント元にほぼ全体を書き直すという作業を二度ほど繰り返した.

もちろん自分で客観的に見れるのが効率が良いと思うが,どんなに頑張っても限界があるので,遠慮せずにコメントをしてくれる周囲の人にお願いをするのが確実であるように思う.

まとめっぽいもの

今回は内容を考えるところから書き終わるのに 2 週間確保した.上で紹介した資料では 3 ヶ月くらいかけてじっくりかけとされているところだいぶ急ぎ足になった. 締め切りが存在したのでこのようなスケジュールになったが,書いている最中に何度もこれはもっと時間をかけて考えるべきものだなと感じた.

もし現時点で近い将来書く可能性がある人は頭の片隅にどんなことを書きたいのか,くらいは考えておいてみたほうが良い.

参考になるかは怪しいが自分が今回書いた文書を見たい人が連絡をくれたら個人的に送れるかもしれない.一応 about にメールアドレスは置いてある.