性欲の科学

by オギ・オーガス サイ・ガダム 坂東智子

Review: ★★★

大量のネットで検索された単語やエロ小説,エロサイトを分析することによって男女の性欲に関しての分析を試みた認知神経学者による一冊.

ほぼ全てのエビデンスが匿名のネット情報に基づいているので,その信頼性がどれくらいのものなのかはわからない.が,二人の学者が長い時間をかけてこれだけの情報を整理したことは驚愕に値する.また本書で一貫して一般には異常とも思える性欲に関しても客観的な分析を貫き通しているのは賞賛したい.

この本で提示された性欲に関しての仮説を飲み込むことはその情報源の不安定さにより自分にはできなかったが,人間の性欲が男女に関わらず多岐にわたっていること,さらに男女間で根本的に異なるロジックが働いていることをたくさんの事例を通して知ることができたのはよかった.

最後に訳者が似たことを書いているが,本書で紹介されているほど人の性的な嗜好性が多岐にわたるのならば,それが自分と異なることで他人を異常者扱いしたり嫌ったりすることはナンセンスだなと感じる.異なる文化圏や社会的グループに行ったら自分がその「異常者」になる可能性も大いにあるのだから.