良い戦略,悪い戦略

by リチャード・P・ルメルト

Review: ★★★★

「戦略の大家」とも呼ばれている,戦略論と経営理論の研究者が,コンサルとして見てきた具体的な「良い戦略と,悪い戦略」の実例をあげつつ,その性質を解説したした本. 直接組織の戦略を考えるような立場にはないが,Kindle セールで見かけた時に,自由な時間を持て余しているのでその使い方についての考え方において参考になることがないか,と思い読み始めた.

たくさんの例で説明されているが,完結に良い戦略とは,

良い戦略とは最も効果の上がるところに持てる力を集中投下することに尽きる。

また,良い戦略は,明確に組織が取るべき行動を示す,ということも繰り返し書かれている. 逆に悪い戦略として,綺麗で夢のあること事ばかり並べて,組織の置かれている状況が織り込まれておらず実行・実現不可能なもの,さらにはそもそも行動指針が含まれていないものがあると述べられている. これを踏まえて考えてみると,いろんな企業のホームページに書かれている「宣言」のようなものは,戦略としてかかがられていないにしても,本書を読んだ後には役に立たないきれいごとにしか見えない.

良い戦略を立てるためには,1. 「診断」により組織の現状を正確に把握し,2. 何をしていくかの「基本方針」を立て,3. そのために必要な「行動」を織り込む,とのこと. 中でも,「診断」が重要であると本書ではされており,ビジネスにおける戦略では,自社のことはもちろんのこと,他社や分野を含めた広い範囲でどれだけ正確に現状が理解できるかが重要であると言っている.

例の全てが,大きな組織におけるものだったので,個人的な時間の使い方戦略に直接役に立つことはなかったが,とりあえずあれやこれやと手を出そうとして ToDo リストにたくさんタスクを積み,それを躍起になって潰していく,ということはやめることにした. それよりも,限りある集中力を今一番優先度と費用対効果が高いものに集中投下しようと決めた.

各所で高い評価を受けているだけあり読み応えがあり,直接関係ないにしても精度の高い意思決定をする上でのヒントが詰まった名著.