概要

海外では全く知られていない国立大学を留年もしながらギリギリ卒業し、研究成果もコネも全くない状態から割と研究を頑張っているドイツの研究室で博士をやれることが決まるまでの簡単な流れを記す。

イントロ

コロナとかで未だ不安定ではあるが、来月 9 月からドイツのある大学にて自然言語処理分野で博士課程を始めることができそうなので、渡航1週間前のこのタイミングで、これまでにやったことをざっくりまとめる。

まだ完全に博士学生になったわけではないので進学先大学名は明記しないが、学生登録が完了したタイミングでプロフィールを更新する予定。

類似した情報がネット上にはあまりないので、誰かの役に立てば幸い。

成績と英語

学部、院、ともに東京にある情報系の国立大学で修了。成績は良くなく学部の卒業には 5 年かかった。在学中に 1 ヶ月ずつ、メキシコとブラジルの大学に研究留学した。研究留学とはいっても一ヶ月なので簡単な作業をしただけで論文とかは書いていない。成績は非常に悪かったが、同大学の留学生とたくさん遊んでいたので基本的な英会話は問題ない。

留年はサボったとかではなく、普通に授業をうけ準備して臨んだ単位を落としたので勉強はあまり得意ではない。ちなみに落としたのは複素関数の授業、面白かったのだがわからんかった。

英会話はまあまあできるが、ヨーロッパで一般に必要とされる、IELTS を留学のために受けたら、6.5 スコアでギリギリという感じ。料金が非常に高いので受け直すことはできなかった。

研究

他の大学は知らないが、自分の大学は学部 4 年から研究室に配属される。大学院まで同じ研究室だったので計 3 年過ごした。興味に沿った自然言語処理を対象にした研究室ではあったが、あまりアクティブなところではなかったので、ほとんど何もしないまま卒業する人もいるような場所だった。

自分は割と意識が高かったので、論文はたくさん読んだ。が、研究を始めたばっかりの段階でほぼ指導なしで成果を出すことをは少なくとも自分には難しく、卒業までの成果としては、査読なしコンペ形式国際学会 1 本、国内シンポジウムポスター発表 2 回、という感じ。成果としてはイマイチ。

職務経験

大学在学中に開発系バイトをいくつか、インターンを二つ経験できた。当時は単純に面白そうだったからやっていたのだが、選考中の面接時にこれに関して結構聞かれ、「ええやん」と言われたのでヨーロッパでは割と重要視するのかもしれない。

博士研究室探し

海外で生活してみたかったので院 2 年目が始まったくらいのタイミングで博士を海外でやろうと思い研究室を探し始めた。今思えばこれは遅すぎる。

英語は少しできたので日本語と英語以外を母国語とし、かつある程度文化的に日本から離れている国に住みたかったので、ヨーロッパを中心に探すことにした。

大学におられる専門が近い何人かの先生に話を聞いてもらったが、特に紹介をしてもらえたりはしなかった。

これまでに読んだ論文で面白かったものの中から、ヨーロッパの大学から発表されているものを探し、その研究室の連絡先をリストアップした。この時点で 15 研究室くらい候補として上がり、その各研究室の成果を見つつ興味の順にソートしていった。 ヨーロッパの非英語圏の大学で前から知っていたところはなかったので、大学のネームバリューとかはわからず単純に研究室の成果だけを見て決めた。

先生にコンタクト

どうやって応募したらいいかわからなかったので、迷惑を承知で自分のランキングの上の方にいる先生から順番にメールを出していった。

内容は以下

  • こんちわ博士課程をしたいものです
  • 先生の oo 論文が面白く興味を持っています
  • こんな研究アイディアを持っています (PDF を添付)

文面自体は短めにした。最後の研究アイディア PDF は、相手の研究室の専門に合わせて新しい自分のアイディアを PDF 1 毎に簡単にまとめたものを、3 アイディアくらい添付して送信した。 研究成果がない状態で研究能力を示す唯一の方法だと思ったので、これは割と頑張ってかいた。

10 研究室くらい一気に連絡メールを送り、4, 5 件返事が帰ってきた(意外と返してくれる)。そのうち、2 つは「今は採用してないわ、ごめんね」で、2 つは「今は採用していないけど、もう少しで開始するからその時また連絡するね」だった。で、残りの一つが、「アイディアおもろいね、今は採用してないけど話でもしてみない?」だった。以降、この最後の返事をしてくれた研究室を「研究室 A」とする。

この最後の先生と連絡してみたところ、直近では予算がないので採用できないが、他に手がないか探してくれて、良さそうな奨学金がドイツ政府からあるのでそれに応募してみないか?という話になった。

奨学金応募

DAAD というドイツの機関から出ている奨学金。

これは非常に長旅で結局2回応募し両方だめだった。色々書けることはあるが、結局だめだった人間からの感想は役に立たないので省略する。

研究室訪問

当時所属していた日本の大学からお金が出そうだったので、奨学金の提出書類の中の研究計画書を書くため、ドイツの研究室に 2 週間ほど訪問して先生とディスカションしたりしてきた。

結局奨学金はだめだったのだが、このタイミングで一度訪問していたのがのちのコミュニケーションを円滑にしてくれたように感じる。

ニート 1.5 年

結局奨学金の結果はダメと院 2 年卒業間近でなったので、そのまま卒業してニートになった (当時の謎ポエム)。

再度奨学金に応募するための書類を作成しつつ、研究室 A 以外で募集をしている研究室を探していた。このタイミングで 2 つの研究室の募集に対して応募してみたが、いずれもダメだった。それらの研究室所属のメンバーを見てみると、博士課程の前段階から割と良い研究成果を持っている人らだったので自分にはハードルが高かったと思う。

ちなみに「研究室 A」の先生と直接話した時に、「博士課程の応募に研究成果を求めるのは酷だよね」と言っていたのでそこはありがたい。

決まる

結局ニートしつつ応募した奨学金はダメだったのだが、「研究室 A」が予算を獲得しポジションができたので応募してみたまえ、と連絡が来たので応募した。

選考には、

  • Research Statement 審査
  • 課題審査
    • ざっくりとしたテーマとデータが渡されて、自分のアイディアを実装・実験し、論文形式でまとめろ。という割と過酷な課題が出て、2週間で解かされた。
  • 最終面接
    • 簡単な質問をされた。

のようなことをした。割と連絡とかしていたので、何もしないで採用されるやろ、と甘く考えていたが、ガッツリ審査された。プロセス自体は割と楽しかったが作業量が多くきつかった。

決まったポジション

ドイツでは一般的らしいのだが、博士学生として州?と雇用契約を結び給料をもらいつつ博士課程の完了を目指す仕事をもらった。多少先生の授業の補佐をしつつ研究に専念していいみたい。給料は生活するには十分な額で、その他にも保険や年金とかもやってくれる。

ボーナスはないが普通の会社員になるような待遇なのかな(ニートなのでわからんが)。

決まってから

契約自体は渡航してから結ぶことになるので、必要な書類を集めつつ渡航用意をニートなのでのんびりとした。この記事を書いている日の午後にワクチンの2回目を打ちそれで準備完了という感じ。

最後にまとめ

成績も成果もコネもない状態でも活発に研究しているところで博士はできそう。超有名どころは競争が激しそうなので手ぶらでは多分無理。

ヨーロッパでは博士の募集はインターネットで公開されるので、そこから応募できるが、先生に先にコンタクトを取ってみるのは有効かも。

研究計画書や research statement は書くのが結構大変なので、応募よりも先に書き始めて良いかも。

関連のあるバイトやインターンは意外と評価される。

質問がもしあったら気軽に連絡してくれて良い。